幼馴染の花の井との特別な絆と、一冊の本。
なんでもないようなこの事実はドラマの中ではかなり重要なことです。
ドラマ「べらぼう」の主人公・蔦屋重三郎の人生は、花の井と一冊の本【塩売文太物語】がもとになっていると言っても過言ではないでしょう。
この二つによって大きく彩られた。大切にされていた「塩売文太物語」が、どのように蔦重の心に深く根ざし、出版王という道を歩ませたのか、そのことを今回は書いてみたいと思います。
蔦屋重三郎と塩売文太物語
先に書いたとおり、塩売り文太物語は蔦屋重三郎が出版の世界で活躍する原点になった物語です。
かむろ時代の花の井にあげた一冊
蔦屋重三郎が柯理(からまる)時代にかむろだった花の井(あざみ)にあげた赤本と言われた本【塩売文太物語】をあげたことがありました。
花の井=あざみはその本を終生大事にしていきますがある事があったときにその本をすてて、違う人生を歩きます。
このことからわかるように、あざみにとって、その本は蔦屋重三郎とをつなぐ大事な本だったのです。
あざみはその本を何かの折に手にして見つめ、柯理にもらったときのことを思い出し、決して報われない恋にふたをし続けました。
体は売っても、心はつねに恋する相手に向いていたんです。
純愛ですね。
蔦屋重三郎と花の井
その思いを蔦屋重三郎は知っていたかは今はわかりませんが、その様子を見て、出版の世界に飛び込み成功していきます。
ドラマの中で、平賀源内に花の井をなぜヨメにしないのか?みたいな話をされたとき、蔦屋重三郎は「吉原では女に恋はしない」と言い切っています。
これはどのような心で言っているのかは不明ですが、吉原という苦界で生きていく遊女を見ていたら、そんな気持ちになるんでしょうか。
それでも、花の井が持ち続けた【塩売文太物語】を見て出版の世界で活躍していくのですから、二人は恋という枠よりもっと深い結びつきでひかれあっていたんでしょうね。
塩売文太物語ってどんな話?
花の井が大事にしていた塩売文太物語ってどんな話だったか気になりますよね。
塩売文太物語:江戸庶民の夢を乗せた出世物語
塩売文太物語は、江戸時代に多くの人々に読まれ愛された御伽草子のひとつです。
なぜ今、あまり知られていないのか不思議です。
成立は室町時代ごろらしいこの物語は、貧しい塩売りだった文太が、誠実さと勤勉さによって大富豪となり、娘たちを立派に嫁がせ、自身も高い地位に昇り詰めるという、立身出世の物語として知られています。
また、神を信心すればかなうというような信仰を大事にしてね!みたいな内容もあるように思います。
塩売文太物語の概要
物語の舞台は、現在の茨城県にあたる常陸国です。
鹿島大明神に仕えていた雑色の文太は、ある日、大宮司に勘当されてしまいます。(その理由は書かれていない)
その後、塩焼きの仕事を始め、持ち前の勤勉さで財を成し、やがて「文正つねおか」と名乗る長者となります。(雑色で勘当されたのに、勤勉で財をなすっていうのが少し理解できないんですが。。。)
その後、鹿島大明神の加護で二人の美しい娘を授かり、それぞれの娘は高貴な身分の男性と結婚します。
文太自身も、宰相の地位にまで昇り詰め、長寿を全うするという、まさに出世物語の典型的な結末を迎えます。
現代でもよく言われるのが、自分の金運を上げると金運のある異性が寄ってくると言われていますが、まさしくそれ?みたいな感じです。
物語の魅力と人気の理由
なぜ室町時代に成立した話が江戸時代まで読み継がれていったのか考えます。
庶民の願いを叶える物語
貧しい者が一攫千金で幸せになるという、多くの人々が願う夢が叶えられる物語として人気を集めました。
読者の共感
文太の誠実さや勤勉さ、そして家族愛といった普遍的な価値観が、読者の共感を呼び起こします。
ハッピーエンド
めでたしめでたしで終わる物語は、人々に希望と勇気を与えたんだと思います。
やっぱり日本人は分かりやすくよかったねって言えるような話が好きですよね。水戸黄門とか暴れん坊将軍とか。
教訓
物語の中には、勤勉や誠実さといった大切な教訓が込められており、人々の道徳的な指針として役立ちました。
勤勉にすごし、神仏を敬えばおのずと運開くというような意味合いだったと思います。
昔の話を読むと、物語はどこか宗教色があって、最後は勧善懲悪というよりは神仏の加護があって、目標を達成できましたよって感じです。
なぜそこまで人気があったのか
普遍的なテーマ
これは現代でも言えるんですが、立身出世のネタってSNSでも人気ですよね。
1日でいくら稼げたとか、貯金や資産がこれくらいありますよ…みたいな話は現代でも好きですが、当時の人たちも大好きだったんですね。
貧困から富への上昇、家族の絆、成功といったテーマは、時代を超えて多くの人々に共感を与えていったと面追います。
蔦屋重三郎と塩売文太物語の共通するところ
蔦屋重三郎は幼い時に親の離婚などが原因で養子にだされ、そこで丁稚奉公のような生活から事業が成功していく様はまさしく【塩売文太物語】です。
まだ何物でもなかった蔦屋重三郎が花の井があざみだったころに渡した一冊の本が「 塩売文太物語】だったというところが何かを私たちに伝えているようながしています。
まとめ
塩売文太物語は、江戸時代の庶民の夢と希望を映し出した、普遍的な魅力を持つ物語です。
成立は室町時代でそこからずっと語り継がれていたこと、貧しい者が努力によって成功を収めるというストーリーは、現代においても私たちに勇気を与えてくれます。
もし、江戸時代の人々の暮らしや文化に興味がある方は、ぜひ一度、この物語に触れてみてください。